「人に頼っていい」
虐待の背景には、心や時間、経済的な余裕のなさがあるケースも少なくありません。疲れが積み重なり、追い詰められてしまう。本当は大切に思っているのに、優しく接する余裕がなくなってしまう。
だからこそ中山所長は、「人に頼っていいんだよ」と繰り返します。
高崎市には、一時預かりや子育て支援サービスなど、保護者を支える制度があります。
「自分たちだけで頑張るんじゃなくて、サービスを使っていいんです」
少し子どもを預けて、映画を見に行ってもいい。一人になる時間を持ってもいい。親が休むことも、子どもを守る大切な支援の一つなのだそうです。
「少し離れたことで、親子関係が良い形に戻ることもある」と話してくださいました。
離れることで見えてくることもある。
その言葉には、長年現場で向き合ってきた重みがありました。
子どもと「一緒に考える」支援
中山所長が大切にしているのは、一方的に指示をする支援ではありません。「こうしなさい」ではなく、子どもの声を聴きながら、一緒に考えていく。子ども自身の気持ちを引き出しながら、“どうしたいか”を一緒に探していくことを大切にしているそうです。
また、「保護者の愛情を求めている子が多い」とも話していました。だからこそ、子どもとの距離感や関わり方をとても大切にしているそうです。安心できる大人との関係を、少しずつ積み重ねていく。それもまた、支援の一つなのだと感じました。
「子育ては、いつからでも取り返せる」
取材の中で印象的だったのは、「子育ては、いつからでも取り返せると思う」という言葉でした。
親もまた、悩みながら子どもと向き合っています。感情的になってしまったり、後から振り返って後悔したりすることもある。中山所長自身も、一人の親として子育てを振り返る場面がありました。だからこそ、「完璧に子育てできる親は少ない」という言葉には、大きな説得力がありました。
親を責めるのではなく、孤立させないこと。それが何より大切なのだと感じました。
地域で子どもを支えるということ
今回の取材では、PTAや地域の役割についてもお話をうかがいました。
「ちょっと心配だなと思ったら、教えてほしい」それは、誰かを責めるためではありません。困っている家庭を、孤立させないため。保護者、学校、地域、行政――それぞれが横につながることで、子どもたちを守る環境は広がっていきます。
「一番身近なのは、親以外では学校の先生かもしれない」という言葉も印象的でした。子どもたちは、多くの大人との関わりの中で育っています。
“誰かが気にかけてくれている”
その安心感が、子どもたちを支える力になるのかもしれません。
「児童相談所=虐待」を変えていきたい
中山所長は、「児童相談所って、怖い場所だと思われている」と話します。しかし実際には、虐待対応だけではなく、発達や子育ての悩みなど、子どもに関する幅広い相談を受け付けています。
「こんなことで相談していいのかな」と思うようなことでも、まずはつながってほしい――そんな想いを大切にしているそうです。
その一方で、中山所長は、「児童相談所は、子どもの命の最後の砦なんです」とも話してくださいました。だからこそ、“何かおかしいかもしれない”という小さな気づきを見逃さず、子どもを守るためにつながっていくことが大切なのだそうです。
相談内容に応じて、虐待対応、家庭支援、発達支援など各担当につながり、必要に応じて学校・医療・福祉とも連携しながら支援を行っています。
「困っていることを、一人で抱え込まないでほしい」
そのメッセージが、「ぱすてる」という場所全体から伝わってくるようでした。
また、「ぱすてる」では24時間体制で児童に関する相談を受け付けています。
「もしかして虐待かもしれない」
「気になる子どもがいる」
そんなときは、一人で抱え込まず、相談してほしいと話してくださいました。
高崎市児童相談所の「027-345-5189(ゴーいちはやく)」のほか、児童相談所全国共通ダイヤル「189(いちはやく)」でも相談を受け付けています。
連絡した人のプライバシーは守られ、匿名で相談することも可能です。
“何かおかしいかもしれない”
その小さな気づきが、子どもを守る大切な一歩につながっていきます。
お話をうかがって
今回のインタビューを通して感じたのは、“気づいた人が、つながる勇気を持つこと”の大切さでした。
助けを求めること。誰かに頼ること。「大丈夫かな」と声をかけること。
その小さな行動が、子どもや家庭を支える大きな力になるのだと思います。
高崎市児童相談所「ぱすてる」は、子どもと家庭に寄り添いながら、地域とともに歩んでいく場所でした。
そして、高崎市PTA連合会としても、保護者・学校・地域・行政をつなぐ“ハブ”のような存在でありたいと感じています。
「高崎で子育てしてよかった」「高崎で育ってよかった」
そう思えるまちにつながっていくよう、これからも、顔の見える情報発信を続けていきたいと思います。
聞き手 令和7年度 高崎市PTA連合会 情報委員会
取 材 2025年12月18日
