子どもの心を育てるには、 まずは『聴く』ことから
「子どもにどう声をかけたらいいのか」―― 子育てをしていると、悩む場面は多いですよね。けれど実は、声をかけるよりも大切な のは“聴く力”なのだそうです。
子どもが「行きたくない」と言ったとき、つい「どうして?」「頑張って行こう」と言いたくなるもの。でもその前に、まずは「行きたくないんだね」と受け止めてあげる。声を返すというより、「聴いているよ」という姿勢 を示すことが第一歩です。
『それだけで、子どもはとても楽になる。』
「聴く」という字には、耳だけでなく“目”や “心”を使って相手を感じ取る意味が込めら れています。言葉では「大丈夫」と言ってい ても、表情が曇っていたら本当はつらいの かもしれない。そんなサインを、目で、心で 感じ取ることが大切です。
そして、聴くことができたら、次のステップ は「声かけ」。ここで気をつけたいのは、ネガティブなメッセージを含めないことです。 「なんでできないの?」ではなく、「ありがとう」「嬉しい」「助かるよ」と、相手が受け取っ たときに温かさが伝わる言葉を選ぶこと。
子どもだけでなく、大人も同じ。疲れて帰っ たときに「ご苦労さま」「ありがとう」と言わ れると、心がふっと軽くなります。そんなポ ジティブな言葉のやり取りが、家庭に心地 よい循環を生み出していくのです。
『 誰も悪くない』から始まるサポート
子どもたちが学校に行けなくなると、親として「何とかしなきゃ」と焦ってしまいがちです。でも、専門家の加藤さんは、こう考えます。
『不登校の子がいるからといって、その子や親や学校が悪いわけではありません。問題の原因は、“家族システム(※)”の中で起きていることが多いのです。』
つまり、誰も責めず、子どもや家族、教職員 が安心して関われる環境を整えることが大切だということです。 例えば、家庭内で親子の関係がぎくしゃくしていたとしても、外部に「原因」を見つけることで親子が協力関係になれることがあ ります。加藤さんはこれを『システムを動かす』と表現しています。ポイントは、問題を個人に押し付けず、家族全体の関係性や環境に目を向けることです。
具体的な一例として、加藤さんは『さぼり虫』という擬人化した存在を使ったアプローチを紹介しています。 子ども自身ではなく、外に原因(さぼり虫) がいるとイメージさせ、家族全員でその原因に立ち向かうことで、子どもが安心して力を取り戻すというものです。
『子どもは“自分のためにみんなが動いてくれている”と感じると、元気を取り戻すこと があります。』
家庭の中で、誰も責めず、子どもが安心できる場所をつくる。加藤さんのサポートは、まずここから始まります。
※家族システムとは心理分野における家族療法の言葉。 人と人の相互関係の中で、家族全体をよい方向へ動かしていこうとするもの。
笑顔が増えるヒント
子育ては、毎日が試行錯誤の連続。つい「他の子と比べてしまう」「自分や子どもを責めてしまう」こともありますよね。でも、保護 者自身の心を大切にすることも、子どもの 笑顔につながります。セルフケアのポイントとして次のようなアドバイスを教えてく れました。
◎比べない、責めない
周りと比べたり、失敗を必要以上に責めたりする必要はありません。みんな違って当たり前。違いを受け入れることで、心がふっと楽になります。
◎気持ちを気軽に話す
『病を市に出す』という言葉があるそうで す。「困っている」「ちょっと苦しい」と思ったら、周りに気軽に伝えてみましょう。情報交換が自然と生まれ、心が軽くなります。難しく考えず、気楽に口にするのがコツです。
◎自分の考えで行動する
「みんなと同じでなければ」と思う必要はありません。自分の価値観で行動し、違う意見 ややり方を楽しむことが、結果的に自分も子どもも安心できる環境を作ります。
加藤さんは言います。『比べない、責めない、 垣根を低くする――この3つが揃うと、大人も子どもも、もっと笑顔になれる』と。
毎日忙しい中でも、ちょっと立ち止まって 自分の心をいたわる時間を持つこと。それが、子どもへの優しさにもつながります。
自分へのありがとう
子育てや仕事に追われる毎日。私たち大人 はつい“ガチガチ”になってしまい、「こうしなくちゃ」「ちゃんとしなきゃ」と自分を追 い詰めがちです。でも、その窮屈さや不安は、知らず知らずのうちに子どもにも伝 わってしまうことがあります。 そんなときこそ、自分自身に向けて「ありがとう」を言ってみませんか?
たとえば寝る前に、「今日も一日頑張ってく れた私の心臓、体、ありがとう」と声をかけ る。深呼吸しながら心に感謝を伝える。これだけで気持ちが整い、眠りが深くなることもあります。 そして、子どもにも同じように「ありがとう」を伝える習慣を持つと、親子の空気が柔 らかくなります。 カウンセリングの現場でも、「寝る前に今日 の良かったことを3つ書く」「ポジティブなことを思い出す」など、心の“P(ポジティ ブ)”を見つける練習をすすめているそうです。最初はうまくいかなくても、続けるうち に“P”を見る癖がついてきます。
誰かに「ありがとう」と言うとき、心の中でその人をやさしく抱きしめるような気持ち で言う。たったそれだけで、言葉には温度が 宿り、相手の心に届きます。
大人がまず自分に「ありがとう」を言えるようになると、そのあたたかさが自然に子どもにも伝わります。 言葉は、心のハグです。今日から、まずは自分に“ありがとう”を贈ってみませんか?
お話をうかがって
高崎市PTA連合会の本部役員のひとりに、加藤さんの教え子がいたことから、この取材が実現しました。 30年の時を経て再び向かい合う恩師と教え子。語られる一言一言に、当時の教室の空気 や笑顔がよみがえるようでした。「安心できる場所があったからこそ、いまの自分がある」――その言葉が情報委員会メンバーの胸にも深く響きました。 高崎市PTA連合会はこれからも、子どもたちが安心して学び、挑戦できる“安全基地”を、 保護者や先生方、地域のみなさんと一緒につくっていきたいと思います。
聞き手 令和7年度高崎市PTA連合会 情報委員会
取 材 2025年9月25日




